センスの哲学 目的
はじめに
この本は、一種の「芸術論」だと言えます。
本書の狙いは、芸術と生活をつなげる感覚を伝えることです。
この本では、 いったん センスが良くなる方向を目指します。
本書が進むにつれて、アンチセンスをどう考えるかという問題が、だんだん浮上してくるでしょう。
この本は、センスという言葉の、よくある使い方から出発します。
しかし、この本では、その禁を破るというか、蛮勇として、センスとはこうだというひとつの見方を提案することになります。
ひとまず、センスがいいと言われる「好ましい状態」があると仮定します。そして、センスなるものに、人を解放してくれるような意味を与えるように考察を進めていきたい。
人をより自由にしてくれるようなセンスを、楽しみながら育てることが可能である。というのが本書の立場です。
おわりに 批評の権利
本書は、『勉強の哲学』(文藝春秋、二〇一七年) から始まる入門書的な著作の、三番目のものと位置づけています。
食べ物を味わうように作品を楽しむということの、そのナンセンスの仕組みを言葉にしようと試みたのが、この本です。
芸術もまた、直接の利害関係の間接化であり、人々を媒介する
目的のための行動が一方にあるとして、その対極に芸術を位置づけるなら、社交はその中間にある
食べることを基本として、人々が、何かを目指すわけでもなく集う空間を大事にしたい。
本書が、芸術と呼ばれるもののイメージを広げ、生きていくことに新たな彩りを加えるものとなることを願っています。